結果
就労糖尿病患者の勤務先の健康管理体制(産業医の有無と合併症)
産業医がいる事業所に勤めている就労糖尿病患者では、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害の有病率が有意に低いことが明らかとなった。また、糖尿病性腎症(3期以上)では44%、糖尿病性神経障害では40%、有病率が有意に少ないことが明らかとなった。
就労糖尿病患者の職場における医療スタッフとの関わり
就労糖尿病患者にとって、職場の医療スタッフとの関わりは、現在は不十分であることが明らかとなった。
就労糖尿病患者の就業上の問題点や困難さ
就労糖尿病患者の約半数は仕事上困っていることがあると回答し、特に、重度の進行した慢性合併症を併発している患者やインスリン自己注射療法を行っている患者では、より治療と仕事との両立に困難さを感じていた。
企業における従業員の年齢調整糖尿病有病率
企業における糖尿病の年齢調整有病率は、企業の規模が大きくなるに従って低下し、どの業種でも同様の傾向であった。
産業医の勤務形態による従業員の年齢調整糖尿病有病率
常勤産業医がいる企業内で糖尿病患者が少ない傾向がみられた。
企業における糖尿病罹患従業員の増減状況
近年の糖尿病罹患従業員数が「かなり増えた」または「少し増えた」と答えた企業は約30%であった。
社内糖尿病罹患従業員を把握状況
全企業において、社内の糖尿病従業員を把握できているのは約半数であった。大企業では比較的把握されていたが、小企業のうち1/3は把握していないと回答した。
企業における定期健康診断でのHbA1c判定基準
HbA1c値(JDS)でのAおよびD判定基準を聞いたところ、A判定では最も厳しい4.3%以下より最も緩い6.1%以下まで幅広い数値の回答があった。同様にD判定も5.5%以上から8.0%以上までの回答があった。
HbA1c値の判定基準はばらつきが大きいことが明らかとなった。なお、この判定値基準に関しては、企業規模別での差違はほとんど見られなかった。
HbA1c値の判定基準はばらつきが大きいことが明らかとなった。なお、この判定値基準に関しては、企業規模別での差違はほとんど見られなかった。
企業における定期健康診断後のフォローアップ
「軽度異常」「要経過観察」判定を受けた従業員に対しては、30%で個別指導が行われていたが、特に何もせずが25%と高率であった。
糖尿病罹患従業員に対する就業制限
糖尿病による就業制限は2割の企業で実施していたが、企業の多くは就業制限規則は作成していないことが明らかとなった。
主治医の就労糖尿病患者の勤務形態の把握状況
約8割の医師が「おおよそ把握」あるいは「把握している」と回答したが、患者から就労についての相談を経験しているとの回答は約44%の医師のみで、さらに、企業より患者の就労について問い合わせを受けたことがあるのは27%の医師に留まった。
医師より企業に対し、患者の就労について問い合わせをした経験があるのは9.4%の医師のみであった。
主治医と企業間の情報の共有は不十分であることが明らかとなった。また、企業への要望において、産業保健スタッフと積極的に意思疎通を行いたいと答えた医師は約4割であった。
医師より企業に対し、患者の就労について問い合わせをした経験があるのは9.4%の医師のみであった。
主治医と企業間の情報の共有は不十分であることが明らかとなった。また、企業への要望において、産業保健スタッフと積極的に意思疎通を行いたいと答えた医師は約4割であった。