振動障害
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運動器障害

 一般的には骨・関節の変化は加齢現象で起る変化が主体ですが、長期間に渡る重筋肉労働、スポーツなどにより変化が修飾されます。また、当然のことながら、痛風、慢性関節リュウマチなど骨・関節に変化をきたす疾患によっても加齢現象で起る変化が修飾されます。振動工具使用者だけに特徴的にみられる変化というものはありません。したがって、 加齢や重筋肉労働等による変化とも区別することができません。
 現在では肘関節までの障害を振動障害として認め、肩関節の障害は認めていません。その第1の理由は肘関節の障害は振動工具使用者に多く認められるが、肩関節の障害の発生率は高くないことによります。第2の理由は振動刺激により骨・関節の障害が生じると仮定した場合、現在の研究結果では手に伝達された振動の強度は中枢に行くにつれて減衰し、その影響はせいぜい肘関節ぐらいであると考えられているからです。振動刺激により、骨関節に障害が生じるという考え方よりも、衝撃によって骨関節に変化が生じると考えられています。
 運動機能の一次健康診断としては、最大握力(瞬発握力)、5回法による維持握力があります。また、二次健康診断としては、60%法による維持握力、つまみ力、タッピングを行います。また、必要に応じてエックス線写真撮影も行います。

1)握力検査

 スメドレー式握力計を用います。直立し、腕を下方に伸ばしたまま最大努力させ、5秒間隔で左右交互にこれを5回繰り返します。このうち、1回目及び2回目の値のうちの大きい方を最大握力(瞬発握力)とします。この最大握力と4回目及び5回目の値のうち小さい方の値との差を5回法による維持握力といいます。60%法による維持握力は、椅座位で握力計を机の上にのせ、肘を90ーに曲げた姿勢で手掌を上に向け、最大握力の60%の値を被検者に針を見せながら保持させ、維持できる時間を測定します。判定基準は表2を参照ください。

2)つまみ力

 労研エスメス式つまみ力計を用います。拇指を下にし、測定指を上にし、測定指の遠位指節間関節を伸展させ、他の指を軽く伸ばした状態でつまみ力を測定します。これを拇指と示指、中指及び環指間について行います。判定基準は表2を参照ください。

3)タッピング検査

 労研エスメス式タッピング測定器を用います。椅座位で左手、右手交互に示指及び中指を1指ずつ30秒間できるだけはやく打たせて、10・20・30秒値を測定します。これらの検査は個人差、年齢差が顕著である上、被検者の協力がないと正確な値を得るのも難しいほか、骨・関節障害とは必ずしも結びつくわけではありません。判定基準は表2を参照ください。

4)エックス線検査

 振動障害に特有な骨・関節障害はありませんが、手関節、肘関節の変化(図 20)がエックス線検査で明らかに認められ、出現時期等から長期に渡る振動工具の使用との間に明らかな相当因果関係が存在すると考えられる時に振動障害の影響を考えるべきでしょう。エックス線上、異常、正常の判読はそんなに容易ではありませんので、判読は複数の医師で行なうのが普通です。骨・関節の変化は加齢現象に基づくものが圧倒的に多いため、やはり加齢現象による変化との鑑別が最も大切です。その他、慢性関節リュウマチのような疾患との鑑別も重要です。上肢の関節機能障害は、苦痛も大きく日常生活での支障をきたすことがあります。上肢のしびれや痛みにより睡眠障害を生じる場合があります。
図23. 肘関節のレントゲン写真(振動工具を長年使用した作業者の肘関節障害)
図20

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