独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

  • 文字サイズ小
  • 文字サイズ中
  • 文字サイズ大
働く女性の健康
ホーム » 働く女性の健康 » 過去の研究の目的及び概要 »
働く女性のストレスと疾病発症・増悪の関連性に係る研究・開発、普及

働く女性のストレスと疾病発症・増悪の関連性に係る研究・開発、普及
主任研究者 辰田仁美 和歌山労災病院第二呼吸器科部長

はじめに

1985年の男女雇用機会均等法の施行およびその後改定により、日本における女性労働者の勤務環境は大きく変化してきています。女性の働き方が徐々に見直されてきましたが、それに伴い種々のストレスも増加しつつあります。労災病院では平成13年10月より女性外来を開設していますが、女性外来を受診した就労女性の中には、職場の環境、人事異動などにより体調不良を訴え、疾病を発症していると考えられる症例があります。第1期の「女性外来のモデルシステムに関する研究」でのアンケート結果
では、女性外来受診者の58%がストレスが関与していると回答し、ストレス内容として、54%の患者が仕事に関することを挙げています。
小山ら1)は、2006年に行った「産業保健における女性労働者問題に係る調査研究のあり方等に関する研究」の中で、就労女性の産業保健に関する国内外の調査では女性労働者に対する調査が不足しているとの結論に至っています。実際に労働環境や労働に関する調査研究は、看護職を除いては、男性に関するものが大部分を占めます。また、職業性ストレス調査票は、職場での個人のストレスや、職場環境の改善や対策として開発され、職場での生活習慣と職業ストレスの関連性などが調査されていますが、疾病の発症との観点からの調査は見られません。

1) 小山善子,佐藤保,城戸照彦,神村裕子,奥田昌幸,野原理子,荒木葉子,星野寛美.「平成17年度産業保健調査研究報告書産業保健における女性労働者問題に係る調査研究のあり方等に関する研究」.2006.3.石川

研究の目的

職場のストレスと疾病発症・症状増悪の関連性を検討し、女性が活き活きと働くために、職域での疾病の早期発見・発症予防のための提言を行うことを目的とします。

研究の対象

対象は一般の就労女性です。産業医が活躍していない中小、零細企業においても、女性外来受診者であれば、研究対象となります。また、一般企業の就労女性についても検討します。

研究の方法

  1. 職業性ストレスや個人のストレス対処能力と症状または疾患発症・増悪との関連について、アンケート調査を行います。(このことによって、職業性ストレスが高い、あるいはストレス対処能力が低い人が、どのような症状(疾患)で受診しているのかが検証できます。)
  2. 生理学的疲労測定値と症状または疾患発症・増悪の関連を調べます。

生理学的疲労測定について

疲労やストレスについてはアンケート用紙による主観的評価が行われており、現在血液・唾液・心拍数などでの客観的評価について検証されつつあります。一般的にストレスがかかると交感神経優位になり、脈拍の増加や睡眠不足が見られます。従って、睡眠状態や脈拍を測定することによりストレスや疲労を推測することができます。

今までの研究結果

一般の企業で就労中の女性47名に対して、生理学的疲労測定(加速度脈波)を行ったところ7名(15%)が異常を示しました。一方女性外来受診者では23名中7名(31%)が異常を示しました。
以上より、女性外来受診者は一般企業就労者より交感神経優位な状態にあることが推察されました。

総括

日本は急速に高齢化社会が進んでおり、今後労働者人口の不足が懸念されています。日本の女性労働者を年代別にグラフ化するとM字カーブを描くことが知られており、女性労働者の活躍が期待されます。従業員数や規模の小さい職場や非正規雇用で働く就労女性の比率は高いことから、働く女性の心身の健康に対応するためには、そのような職場の就労女性についての知見も必要です。
疲労の客観的測定(自律神経の解析、睡眠状態の分析)やアンケート調査により疾病発症との関連性が見いだせれば、職域での疾病の早期発見・発症予防や、働く女性のQuality of Working Lifeに貢献すると考えています。