独立行政法人労働者健康安全機構 研究普及サイト

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職業性呼吸器疾患

2.じん肺合併症の現状と客観的評価法に係る研究

2-1)じん肺合併症の発生状況に関する研究 (研究責任者:大塚義紀)

【目的】
じん肺合併症のうち、肺がん以外の5疾患の発生状況について全国労災病院の実態を調査する。

【対象】
新たに発生した肺がん以外のじん肺合併症を有する症例(管理4症例も含む)。

【参加施設】
全国の労災病院に対してアンケート調査を実施する。

【調査対象期間】
平成20年4月から23年3月末まで

【方法】
全国労災病院で新たに発生したじん肺合併症患者を北海道中央労災病院へ登録する。登録患者に対し以下の項目について調査する。

調査項目
① 年齢、職歴
② XP分類
③ 管理区分
④ 臨床症状と経過(結核は排菌の有無と程度など、気胸は再発回数、部位などを調査する)
⑤ 呼吸機能検査
⑥ 治療法:抗結核薬の種類、治療期間、手術の有無等

【中間集計結果】
北海道中央労災病院における平成20年度の合併症の発生状況について調査した結果、肺がん17例(42%)、気胸17例(42%)、肺結核4例(10%)、結核性胸膜炎1例(3%)、続発性気管支炎1例(3%)であった。
このうちじん肺管理4患者を除くと、肺がん13例(61%)、気胸4例(19%)、肺結核2例(10%)、結核性胸膜炎1例(5%)、続発性気管支炎1例(5%)であった(図―2)。この結果を平成20年度の全国の合併症の発生状況(図―3)と比較すると、続発性気管支炎が北海道中央労災病院ではわずか5%であるのに対し、全国では79%と著しい相違がみられた。この結果は、現在の続発性気管支炎の労災認定制度に大きな問題点があることを示唆しているものと考えられた。今後さらに他施設の症例も加え、複数年度にわたって検討する予定である。

図-2 平成20年度の北海道中央労災病院におけるじん肺合併症の比率
平成20年度の北海道中央労災病院におけるじん肺合併症の比率

図-3 平成20年度に発生した全国のじん肺合併症の比率
平成20年度に発生した全国のじん肺合併症の比率

線写真が50%と最も多いが、特に今回の研究で注目した胸部CTと喀痰細胞診の合計が39%を占めており、これらの2つの検査法も肺がん診断に重要であることを示していると考えられた。

2-2)続発性気管支炎の診断、治療法に係る研究(研究責任者:大塚義紀)

【目的】
続発性気管支炎症例に対して下記項目について調査し、本症に対する適切な診断・治療法について検討する。

【対象】
じん肺として労災認定を受け、さらに現在も続発性気管支炎の診断基準に合致する臨床症状を有するじん肺患者(目標20例)

【参加施設】
北海道中央、旭、神戸、岡山、富山労災病院

【研究期間】
平成21年10月から24年3月

【方法】
上記対象に合致するじん肺症例を登録し、以下の項目について調査する。

調査項目
① 年齢、職歴、喫煙歴(認定時)
② 続発性気管支炎認定時期
③ 認定時とその後の臨床所見の経過
④ 胸部X線写真分類
⑤ 呼吸困難度
⑥ 呼吸機能検査
   喘息が疑われる例では可逆性テストも実施
⑦ 喀痰検査(認定後の経過)
   肉眼所見、細胞診検査、細菌同定:毎月実施
   細菌定量培養検査:3ヶ月ごとに実施する。
⑧ 治療法と臨床経過:特に抗生剤の使用状況と効果について
⑨ 呼気中NO濃度測定
⑩ CTによる3次元気道解析
⑪ Impulse oscillometry(IOS)法による呼吸抵抗の測定

【研究の進捗状況】
現在、症例収集および経過観察中である。